耳・鼻・喉の健康コラム

【耳鼻咽喉科領域の不定愁訴】逆流性食道炎による咽頭・喉頭炎のはなし

逆流性食道炎

喉もと通れば熱さ忘れる・食べてすぐ横になると牛になる

昔の人は“喉もと通れば熱さ忘れる”や“食べてすぐ横になると牛になる”といった戒めの言葉をよく口にしていたものですが、それは逆流性食道炎という病態と深い関係があるというお話しです。

逆流性食道炎とは何らかの原因で胃酸が逆流し、食道に慢性的な炎症を起こす病態です。

げっぷや胸やけといった典型的な症状以外にのどの症状を訴える方も少なくありません。

胃酸はpH2の強酸であることはご存じの方が多いかと思いますが、その強酸がのど(咽頭・喉頭)に少量でも慢性的に降りかかっていると、のどの粘膜に炎症を起こします。それが逆流性食道炎による慢性咽頭・喉頭炎や咽頭喉頭異常感症といった病態です。

食道の粘膜はことわざではありませんが、大変強く、頑丈な粘膜でできています。それに対し、のど(咽頭・喉頭)の粘膜は薄く、そして敏感です。それは食べたもの、飲んだものが気管から下に落ちないようにするための生体防御反応のひとつで、小さな小骨が刺さったり小さな口内炎ができただけでうっとうしく感ずるのはその為です。

逆流性食道炎は様々な生活環境が原因に

逆流性食道炎は主に生活習慣や生活環境で起こります。飲酒や喫煙、食生活といった生活習慣だけでなく、加齢や職業、精神的・肉体的ストレスといった生活環境でも起こります。

胃と食道は括約筋という筋肉の力で胃酸の逆流を抑えています。いわば水道の蛇口のようなもので、加齢による筋力の低下や、前かがみ(前傾姿勢)になったり、重いものを持ち上げたりする際大きく腹圧の掛かるような運送業や介護職、農業といった職業も胃酸逆流の原因になります。また寝そべりながら無理な姿勢でスマートフォンを操作することも原因となり決して中・高年だけでなく若い方でも起こり得る病態です。

治療は食生活や生活習慣の改善と薬物療法です。

食べ過ぎ・飲みすぎを控えることや食べてからすぐに横になったり。といった悪しき習慣を見直すことが必要です。薬物療法はプロトンポンプ・インヒビターやH2ブロッカーといった胃酸を抑えるような薬剤の他に、粘膜の炎症を取るような消炎剤や去痰剤といった薬剤を数週間から数か月服用して頂きます。また、一時的によくなっても生活習慣や生活環境の改善がないと再発することも少なくありません。ですからお薬以外にも食生活含めた生活習慣、生活環境の改善をして悪しき習慣を断つことも治療の一環です。

“喉もと通れば熱さ忘れる”や“食べてすぐ横になると牛になる”といった先人の作った戒めの言葉も、実は逆流性食道炎と深い関係があるのです。