【耳鼻咽喉科領域の不定愁訴】顎関節症のはなし
耳鼻咽喉科領域の不定愁訴、『顎関節症』
不定愁訴とは
不定愁訴とは、頭が重い何となく疲れやすい、食欲がない・・・など特定の病気としてまとめられない漠然とした身体の不調の訴えで、我々医療者側にとって訴えに対し所見に乏しく、病的か否か判断に迷う状態です。
顎関節症とは
最近、あるいは随分前から耳鳴りがする、耳が塞がったような感じがする、耳に聴こえにくいような感じがする、耳が痛いことがある・・・といった症状があればそれは顎関節症かもしれません。
耳鼻咽喉科領域の不定愁訴の一つに顎関節症があります。顎関節症とは顎関節内の障害、咀嚼筋の障害によって顎の関節の収まりが悪くなった状態で、それに加え心理的要因など多様な要因が原因となり生ずる病態で、耳鼻咽喉科には耳鳴り、難聴感、耳閉塞感、耳痛、めまい感といった訴えで受診されます。視診上異常所見がなく、検査をしても正常で耳鼻咽喉科だけでなく内科や脳神経外科といった色々な診療科を受診しても診断に至らずお悩みになっている方が多いのが実情です。顎関節や側頭部(こめかみのあたり)の圧痛や開口時痛といった症状だけでなく、除外診断により診断のつくことが多い病態でもあります。
顎関節症の治療法について
顎関節症の有病率は人口の5~10%、歯科患者の12~15%ともいわれていますが潜在患者は実際にはもっと多いといわれています。男性より女性に多く、特に若年~更年期以降の女性に多い傾向にあります。いつの間にか自然に治ってしまうこともありますが、反復することも特徴の一つです。
診断は、検査等で異常のないことを確認した上で、歯ぎしりや食いしばり、過開口(歯科治療、いびきなど)、急激な体重減少、虫歯の有無、片側での咀嚼の習慣といった事を問診で確かめ、開口時の顎の歪みの有無、顎の触診で関節の摩擦音(クリック)がないかなどを確認します。また、精神的・肉体的ストレスや加齢、骨格(小顎)、歯を食いしばることが多い職業(運送業・介護職・保育職など)、薬剤性(睡眠導入剤、精神安定剤の常用・連用)、飲酒、姿勢(猫背、長時間の無理な姿勢:PC業務、スマートフォンの操作など)といったことも原因・背景にあることが多くそれらを確認し、生活指導も併せて行います。
治療は生活指導、局所の安静といった保存的治療が原則で、必要に応じ顎関節の負担を軽くする目的でマウスピースの作成・装着、虫歯があれば歯科的治療をお勧めし、長引く、反復する場合には消炎鎮痛剤、筋弛緩剤、精神安定剤などの薬剤を服用して頂くこともあります。