耳・鼻・喉の健康コラム

扁桃腺のおはなし

扁桃腺はその機能はまだ謎が多い人間リンパ組織のひとつ

扁桃腺とはその機能はまだ謎が多い人間リンパ組織のひとつで、口蓋こうがい扁桃・咽頭扁桃(アテノイド)・耳管扁桃・舌根扁桃の4つがあります。

臨床的に問題となるのは口蓋扁桃と咽頭扁桃(アテノイド)の2つ

臨床的に問題となるのは口蓋扁桃と咽頭扁桃(アテノイド)の2つの扁桃腺で、炎症の反復(特に口蓋扁桃・習慣性扁桃炎)と大きいがゆえの問題(口蓋扁桃肥大、アデノイド増殖症)で上気道が狭くなることで、いびきや睡眠時無呼吸症、滲出性中耳炎しんしゅつせいちゅうじえんの反復を来すことがあります。また、病巣二次感染症(病巣感染症)という扁桃腺が掌蹠膿疱症しょうせきのうほうしょうという皮膚疾患、lgA腎症といった腎臓病などを引き起こすこともあります。

その場合、口蓋扁桃摘出術・アデノイド切除術といった外科的手術の適応になることもあります。口蓋扁桃・アデノイドはだいだい10 歳前後まで生理的に大きく、以後自然に縮小していくものですが個人差もあり、大きすぎる場合、縮小が十分に得られない場合には前述のようにいびきや睡眠時無呼吸といった上気道の狭窄による症状を起こします。また、特に口蓋扁桃が大きい場合にはのど越しの悪いものを敬遠しがちになり偏食の原因になったり、アデノイドが大きいと滲出性中耳炎の反復だけでなく、鼻呼吸がしにくくなり口呼吸をすることで咬合障害(反対咬合。いわゆる受け口) になったり、アデノイド顔貌という緊張感のない問抜け顔(例えるなら志村けんの“アイーン”の顔)になったりもします。咬合障害は歯科矯正の対象になることもあり、治療のため数年間装具の装用が必要になることもあります。

手術の適応が必要になるケースについて

症状があまりに著しい揚合は手術になりますが、小児ではおおむね3 歳程度からが目安です。成人では年に3〜4回以上扁桃炎による高熱、摂食困難といった症状がある揚合には手術適応と判断していますが、妊娠の可能性のある女性は年に1〜2回程度でも手術をお勧めしています。それは妊娠すると抗生剤や消炎鎮痛剤といった薬剤が胎児に及ぽす影響から使えないからです。

手術は原則入院で、全身麻酔で行います。手術時間は1〜2時間程度。入院期間は施設にもよりますが約1週間前後です。手術による問題は術後の痛みと出血です。副院長も小学校入学前に習慣性扁桃炎とアデノイド増殖症で当時の国立栃木病院(現・栃木医療センター)で院長の執刀で手術を受けましたが、術後痛みでしゃべることも食べることもままならすとてもつらかったものです。痛みは徐々におさまりますが、最も問題となるのは術後の出血です。術後出血は手術当日となぜか術後1週間ほどしてからが多く、ひどい場合には緊急で止血手術、出血の多い場合には輸血の可能性もあります。また、術後一時的に食べたもの、飲んだものが鼻に回ってくる鼻咽腔逆流といった状況も起こることがありますが、これは約数週間で回復するものです。

 

手術適応については当院含めお近くそして掛かりつけの耳鼻咽喉科専門医にご相談下さい。
また、手術に関しては充分な説明を受けてからご検討ください。